2014.5.23生徒様:オーストリアウィーン舞踏会 体験記【体験談編

皆様こんにちは。今日は当校のドイツ語生徒さまより、
オーストリアウィーンで舞踏会に参加された際の体験記を
頂きましたのでご紹介させていただきます。
なかなか普通では体験できない貴重な体験をされています。
是非、ご覧頂き社交界本場の雰囲気を味わって下さい!

(ウィーンの舞踏会「Opernball:国立歌劇場舞踏会」)

 

ウィーンと言えば音楽とともに舞踏会(Ball:バル)が有名である。かの地では毎年12月末から3月までの間、大小さまざまな舞踏会が300近く開催されるから、この期間は毎晩ウィーンのどこかで必ず舞踏会が開かれていることになる。開演はだいたい夜の10時から、終了は朝の5時というのが一般的という夜通し踊る夜会に参加して来たので紹介したい。

ウィーンで開催されるバルの最高峰に位置するのが国立歌劇場を舞台に開催されるOpernballである。オーストリアの国家行事となっており、会場となる歌劇場の貴賓席には大統領他、政府首脳や海外から招待された高官が居並ぶ。平土間には特設のダンス用床が設置され、回りを取り囲むロージェ(ボックス席)には着飾ったセレブ達が陣取る。今年は2月27日に開催され、その様子はORF(オーストリア国営放送)で同時中継され、オーストリアはもちろんヨーロッパ各国に放送された。さながら日本の大晦日の紅白歌合戦のテレビ中継のようである。

バルでは開演していきなり踊りが始まるわけではない。最初に厳かなセレモニーがある。Opernballではそれが充実していて、国家斉唱、EU歌演奏に続き、デビュタント(その舞踏会で始めて社交界にデビューする若者たち)の入場があり、その後国立歌劇場バレイ団によるバレイの演技、歌劇場の専属オペラ歌手による歌唱が続く。そしてウィーン・フィルによる演奏があり、終わるとやっとデビュタントによる踊りである。カドリールを整然と踊った後、ウィンナワルツの調べに乗ってくるくると回りながらワルツが華麗に踊られる。女性は全員白いドレスでお揃いのティアラをつけていてともて綺麗だ。

そして、その後「Alles tanzen(全員で踊ろう)!」のかけ声とともにフロアの人たちが全員で踊り始める。何千人もの人がいっせいに踊るわけだからその混雑はもの凄く、山の手線の朝のラッシュと変わらない感じだ。その場で踊るしかなく、とてもくるくると回ることなどできない。

みなさんはウィーンのバルではウィンナワルツしか踊らないと思うかも知れないがそれは大間違いで、社交ダンスのほぼ全種目がかかる。スローワルツやタンゴ、スローフォックストロット、クイックステップもあるし、演奏がオケからビッグバンドの演奏に変わるとラテンが多くかかり、ジルバ、ルンバ、チャチャチャ、サンバ、ジャイブなども熱狂的に踊られる。

バルでのウィーンらしい種目といえばポルカが結構かかることと時間をきめてカドリールを全員で踊ることだろう。ほとんどのバルでヨハン・シュトラウスの「こうもりカドリール」が踊られる。ダンスの合間に飲んだり食べたりしていてもこの「こうもりカドリール」の開始時間になると人々はぞろぞろとダンスフロアーに集まってくる。1番から6番まであるそれぞれの楽章に振り付けがあり、初めての人でも分かるように壇上ではダンスの先生がドイツ語と英語で早口で説明するのだが、そんな簡単なものではなく、フロアいっぱいに何列にも並んでいる人たちは大混乱に陥る。「こうもりカドリール」ではこの混乱するのが楽しいという人もいたりする。バルによってはドイツ語でしか説明がない場合も多いので、やはりドイツ語の素養は必須であろう。

(ウィーンの舞踏会「Bonbonball:お菓子屋さん舞踏会」)

2月28日は、前日とはうって変わってかなりカジュアルな雰囲気のBonbonballがコンツェルトハウスで開催された。ウィーンの製菓会社の組合が主催するバルで、入り口で手提げ袋が配られ、たくさんのお菓子をもらえるのが特徴だ。このバルは若者の参加が多く、ステージ上ではミスボンボンバルコンテストなどが行われて盛り上がっていた。伴奏のオケはかなり小編成で指揮はバイオリンの弾き振りだったが、舞踏会でのダンス伴奏を熟知しているようで、踊る人の様子をみながらテンポを変えたり、即興でリピートを入れたりしていた。ヨハン・シュトラウスの楽団もその昔こうだったのだろうなと想像してしまった。時々天井にある大きな風船が床に下りてきて、参加者は競って風船を割りに行く。割ると中から景品が出てくるという仕掛けになっていて、その時の風船の残骸などいろいろな物が床に散乱して、脚で蹴って邪魔にならないようフロア外に出しながら踊るという日本ではあまりない経験をすることができた。この日は御菓子で膨らんだ紙袋を持ってホテルに帰ることになった。

(ウィーンの舞踏会「Juristenball:法律家協会舞踏会」)

3月1日は、王宮で開かれるJuristenballに参加した。この王宮で開かれるバルだけでも期間中18もあるそうだが、中でもこのJuristenballは文字通り弁護士が多く、社会的地位が高いインテリが多く参加する格調高いバルと聞いていた。開演が9:30と他のバルよりちょっと早いのだが、理由は参加してみてよく分かった。

最初のセレモニーで来賓がぞろぞろ入場するのだが、その数が凄い。この入場行進だけで30分かかり、ステージ上の来賓席はどうみても100人分くらいしかイスがないのだが、ほとんどの来賓はステージの上がるとそのまま後ろのドアから出て行くのだ(笑)来賓スピーチもたくさんあり、ちょっと日本の昔の小学校の運動会みたいであった。セレモニーのあと、デビュタントの踊りがあるのはOpernballと同じである。

Juristenballはメインの舞踏会場以外にもいくつかの部屋に会場が用意されていて、それぞれバンドやジャズトリオが演奏していてそこでも踊れるようになっていた。そのため、メインの会場が混雑で踊りにくいと言うことはなかった。時間を決めて「こうもりカドリール」が踊られるのは他のバルと全く同じ。さすがに三晩目で慣れてきたので、なるべくダンスが上手そうなペアを探して前に並んだのは言うまでもない。このバルは間違える人が少なく6番のテンポはどんどん早くなっていったが、オケがきっちりと演奏していたので驚いた。終わると参加者は拍手喝采であった。

このJuristenballが今回参加したバルの中で私には一番しっくりと来た。すでに舞踏会慣れもしていたので、会場にいる外国人女性何人かにダンスの申込みをして踊ってもらった。もちろんドイツ語でプロポーズする訳だが、相手がドイツ語ネイティブでない場合はすぐに英語に切り替える必要がある。バルには世界各国から参加している。オーストリア人数人とフランス人の女性と踊ることができたのはよい経験となった。そもそもウィーンで舞踏会は踊るためにあるのではなく、社交の場として集いそのついでに踊るのが趣旨である。相手の女性と踊りながら話ができないのでは本末転倒である。ダンスの練習と同時にしっかりと語学の勉強もしてから臨むことをお勧めする。