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2019.11.26アントニーナ先生のロシア・ウクライナ情報局【ロシア・ウクライナのビジネスマナー】

皆さん、こんにちは。Здравствуйте! (ズドラーストヴィチェ! )

欧米・アジア語学センター、ロシア語講師のアントニーナです。

今日のトピックスは、「ロシア・ウクライナのビジネスとマナー」です。

日本で常識とされる商習慣、商業道徳観は、ロシア語圏では異なることがたくさんあります。
ビジネス上の初対面においては、やはりどの国も第一印象は重要です。

ステレオタイプかもしれませんが、日本での初対面では相手の肩書き、年齢、学歴などを見られますが、ロシア語圏では、まずは服装や身だしなみを見られます。男女を問わず、ネイリングを綺麗に保ち、靴の手入れ、スーツのアイロン掛けは絶対に怠りません。また、日本ではシックな色調のネクタイを用いる事が慎ましくお洒落であるとされますが、ロシア語圏ではフォーマルな場でも、非常に派手なネクタイやシャツが好まれます(TV で要人が身に付けているネクタイをご覧ください)。
上司対部下、先輩対後輩、顧客対取引先のような上下関係やピラミッド構造は、日本ほどは徹底されていません。封建社会が日本ほど長く続かなかったため、人の序列化はそれほど見受けられません。もっとも、上司などの上の立場を振りかざした「上から目線」の態度はビジネス上では受け入れられず、相手によって声のトーンを変えたり、言葉を使い分けることもあまりありません。

ただ、歪んだ男女人口構成比により女性人口の方が多く、就職、意思決定権、人事、地位、給与、昇格などでは男性優位な傾向があり、特に社会主義社会の崩壊後は女性の地位や活躍機会が不平等になっています。
日本にも蔓延る「お茶汲み」「腰掛け」と言われるような女性蔑視とも言える風潮がまだあるとすると、ロシア語圏の女性は「会社のロビーの花」のように例えられることがあります。女性は生真面目で働き者が多いのですが、社会からの適正評価はまだ先のようです。

そして、日本人が驚くことは「笑顔」についてです。仕事をしている時には、スチュワーデスでもマクドナルドの店員のような接客業でさえも、笑顔はほとんど見せません。これは不機嫌に嫌々ながら仕事をしているからではなく、人為的な「つくり笑い」を不誠実で不快であると感じる国民性だからです。また、旧ソ連時代には職業によっては「労働を提供する時は笑うな」との教えがあったことも現在まで影響しているのかもしれません。日本に在住のウクライナ人やロシア人が笑顔を見せるのは、日本の作法に充分慣れ親しんでしまっているからでしょう。

時間に対する観念は日本と大きく異なります。出社やミーティングの遅刻は日常茶飯事で、これが実務上のトラブルになることもあります。ですので、何事も誰かと約束する際には、時間に余裕を持って予定を立てる事が肝心です。メールの返信なども中々いただけないことがありますので、いつまでに返信が必要であるかを相手に事前に伝え、返信が遅れた際には催促を重ねることが重要です。何か仕事を依頼しても、完結するまでに予想外な時間を要したりします。ましてや終業時刻を超えた残業をしてまで仕事を定刻通りに完了することは緊急事態を除いて稀です。

日本の会社での業務は、上層部への報告・連絡・相談(ホウレンソウ)がコミュニケーションが基本とされ、常に縦のコミュニケーションが重要視されます。また、日本の会社の業務進行には、上司からの指示に従い業務を進めることが一般的とされ、進捗状況は上司と組織内で共有されることから業務は共同作業になります。一方ウクライナ、ロシアでは、各部課にその仕事分野のスペシャリストが配置されるため、担当者の役割、目標、責任の所在が明確であり、現場の裁量と責任で仕事を任せられています。担当者は自分の仕事の方法を熟知しているため、上司が逐一指示や承認作業をすることは少なく、担当者がイニシアチブを持って仕事を進行します。ですので、大きな判断を下したり業績に大きく影響する業務を除いて、上司は担当者から仕事の大まかな報告のみを受けることが一般的です。また、自身の仕事の範囲が明確化されてるため、担当者が業務契約上請け負っている業務外のことについて質問や依頼をされても、その担当者が親身に対応してくれることは稀です。極端な言い方かもしれませんが、つまり、チームワークの得意な日本、個人プレーが得意なロシアとウクライナといったところです。

私は個人プレーが得意ですがみなさんは?

それでは、次回まで。До свидания! (ダスビダーニャ! それでは、また!)

仕事風景