国際結婚や海外赴任によって、海外で妊娠・出産する女性も増えています。日本と海外では、出産(分娩)の常識が違うことをご存じでしょうか?
右も左も分からない海外で、お母さんが少しでも安心して元気な赤ちゃんを産めるように、日本と海外でどういった点が違うのかを紹介していきます。
さらに、出生届の出し方についても説明するので、海外での出産を控えている方は確認しておいてくださいね。
妊娠の検診から出産の瞬間まで、国別の特徴もYouTube動画を参考にチェックしてみましょう。
この記事の目次
海外と日本の出産の違い
初めて妊娠・出産を経験する方にとって、なにもかもが未経験で不安になることも多いと思います。さらに海外でとなると、日本人の出産に対するイメージや習慣が覆されることもあるでしょう。
不安が少しでも解消されるように、海外と日本ではどのような違いがあるのか解説していきます。
海外と日本の妊婦検診の違い
海外と比較した日本の産科健診の特徴として、妊娠初期から医療機関にかかる人が多いことが挙げられます。日本の診療所では経膣超音波装置が広く普及しているので、初期の妊娠でも確認できるのです。
日本では、妊娠初期(8週)から出産までに14回分の健診スケジュールを厚生労働省が例示しています。毎回、血圧や体重の測定、尿検査、医師による診察があり、定期的に血液検査や超音波検査も行うのが一般的です。
一方海外では、日本よりも妊娠検診の回数が少ないことがほとんど。アメリカでは、初めて産婦人科を予約して診察するまでに数週間かかることもよくあり、出産までの超音波検査が2,3回だけというクリニックもあるでしょう。
さらに、妊婦健診の内容も問診と胎児心音チェックがメインで、日本人からすると不安になることもあるかもしれません。しかし、日本では20万円前後で受けられる新型出生前診断(NIPT)ですが、アメリカでは保険適用で受けられます。
また、日本は妊娠中の体重管理について厳しい印象がありますが、海外ではあまり重視しないことも多いでしょう。その代わり、アメリカでは必要な栄養素を取り入れるために、サプリメントを摂取するように指示されることもあります。
海外と日本の出産の違い
海外と日本の出産時の違いはさまざまです。日本で助産師は女性にのみ与えられた資格ですが、オランダやフランスでは男性助産師も勤務しています。アジア諸国では占いや風水などを参考に、縁起のいい日に出産日を決めることもあるようです。
出産方法には、自然分娩(経腟分娩)、帝王切開、無痛分娩などの種類があります。
・自然分娩:腟を通って赤ちゃんが産まれてくる経腟分娩であり、自然の流れに沿った分娩方法です。出産の兆候であるおしるしがあり、陣痛が起き、破水したり子宮口が広がったりした後に、お母さんが強くいきむことで赤ちゃんが産まれてきます。
・無痛分娩:麻酔を使うことで陣痛の痛みを和らげる分娩方法です。陣痛を和らげることで産後の体力回復も早く、痛みに弱い人やパニックを起こしやすい人、高血圧などの合併症を持つ人などにも有効とされています。
・帝王切開:手術によってお腹と子宮を切開し、子宮の中にいる赤ちゃんを取り出す方法です。逆子や双子などの理由により自然分娩のリスクがあると判断された場合に、お母さんと赤ちゃんの安全を守るために行われることも多いでしょう。
日本では昔から、「おなかを痛めて産んだ」という経験が美徳とされてきました。しかし、近年は妊婦の高齢化や帝王切開率も上がり、自然分娩にこだわらない出産方法も選択肢として増えています。
無痛分娩は世界的にも主流で、無痛分娩の割合が高い国は、アメリカ、カナダ、フランス、イギリスなどです。アジアでは、イスラエル、シンガポール、韓国などで比較的無痛分娩の割合が高くなっています。
また、中国では帝王切開による出産の割合が60%以上と、圧倒的に高くなっています。
海外と日本の産後の違い
海外と日本では、出産するための入院日数にも差があります。日本では正常分娩で4〜7日、異常分娩で7〜10日ほど入院をしますが、海外では産後数日、早ければ数時間で退院することもあります。
例えば、アメリカの場合は、出産後1日までしか保険が適用されないケースもあり、出産後すぐに退院することもめずらしくありません。そのため、産後の回復が早い無痛分娩や帝王切開を選ぶ女性も多いでしょう。
また、産後1ヶ月の過ごし方も国によって異なります。日本には昔から「床上げ(とこあげ)」という習慣があり、産後1か月近くは家事をせずなるべく横になっていました。さらに、現代社会でも日本の産休・育休における制度では、産前は「出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前から)」、産後は「出産の翌日から8週間」は就業できないことになっています。
アメリカでは産後2週間〜1ヶ月以内に社会復帰する女性も多く、母親の体調を気遣う日本の制度は魅力的に感じられるかもしれません。
日本人が海外で出産したときの届出について
日本で出産した場合、新生児の届出は出生日を含め14日以内に提出する必要があります。
そして、日本人夫妻が海外で出産した場合は、出生日から3ヵ月以内にその国の大使館もしくは領事館に提出するか、日本の本籍がある役所に郵便などで書類を提出しなければなりません。
出生届の出し方について、必要な書類や流れと注意点を解説します。
出生届の出し方
アメリカで出産し、その子供の日本国籍を留保するには、出生届を在外公館に提出するか、日本の市区町村に郵送する必要があります。
子供が生まれた日を含めて3ヶ月以内なので、3月3日に生まれた場合は6月2日までに届け出るということです。この期限を過ぎると、その子供は日本国籍を喪失してしまうので、早めに書類を準備し届け出るようにしてください。
出生届必要書類(在ニューヨーク日本国総領事館)
・出生届 2通
・外国官公署発行の出生証明書 原本1通・コピー1通
(子供の氏名・性別・生年月日・出生場所・母の氏名の記載が必要)
・出生証明書の抄訳文 2通
・日本国籍を持つ父母双方の旅券 コピー各1通
・日本国籍を持つ父母双方の米国での滞在資格が確認できるもの(米国ビザ・
グリーンカード等)
各国の大使館によっても、必要書類や細かな記載方法が変わります。事前に調べておき、産後に備えましょう。
【国別】出産(分娩)の特徴
日本人の移住先として人気の4つの国、アメリカ・中国・オーストラリア・タイでの出産について、それぞれの特徴をチェックしてみましょう。
また、おすすめの動画も紹介します。現地の病院の様子や出産の瞬間も確認できるので、安心して出産に臨むためにも、ぜひ参考にしてみてください。
アメリカでの出産
日本とアメリカの出産の大きな違いに入院期間の違いがあります。日本では正常分娩の場合、産後1週間程度を病院で過ごしますが、アメリカでは、産後2日目には退院することがほとんどです。さらに、帝王切開の場合でも手術後3〜4日で退院します。
アメリカでは、早く離床した方が回復が早いという考えが一般的なようです。
また、アメリカでは夫の立ち会い出産がほとんどで、病院によってはカメラやビデオの持ち込みも自由にできます。出産の貴重な瞬間を記録したい方におすすめです。
基本的に、麻酔を使った無痛分娩で出産する人が多く、安全なお産として認知されています。出産後にお母さんの痛みがひどいとき、アメリカでは飲み薬やスプレー式の鎮痛剤 を積極的に使うのも特徴的です。
動画紹介
アメリカで初めての出産を経験された、MinamiさんのYouTube動画です。陣痛が始まってから出産の瞬間までの体調の変化や、退院するまでの病院の様子も確認できます。
【アメリカで初めての出産】予定日前日に長男を出産しました! | 無痛分娩 | 産後の入院生活 | 愛犬と赤ちゃん初対面 | OUR BIRTH STORY
英語と日本語と字幕でわかりやすく解説されているので、アメリカで出産を控えている方の参考になるはずです。産まれた瞬間の映像に感動します。
中国での出産
中国人の中には「赤ちゃんは大きいほうが福がある」と考える人も多く、妊娠中に体重が増えることに対するマイナスイメージは少ないでしょう。
また、出産のリスクを避けるとともに、一人っ子政策によって「出産は人生で1度だけ」と考える人も多く、帝王切開での出産が一般的でした。最近では母体の負担軽減のために、無痛分娩も人気のようです。
中国では縁起がいい年や日付の出生率が高いこともよくあります。例えば、2016年の干支である「申」は、古来より「賢くてかわいい」という印象から縁起がいいとされていました。
さらに、中国の産後ケアとして「月子」(ユエズ)と呼ばれる伝統があります。出産後1ヶ月は家を出たり、冷たいものを飲んだりすることを禁止しており、期間中に母親と赤ちゃんは一緒に室内で過ごします。
動画紹介
中国で出産された、劉さんのYouTube動画です。帝王切開で産まれる瞬間の音声に日本語の字幕がついています。
【中国出産vlog】無事出産を終えました。
病院食は栄養バランスが良さそうで、とても美味しそうでした。フレンドリーな病院の方々にホッとできそうです。
オーストラリアでの出産
オーストラリアでは、まずGP(General Practitioner)という一般開業医を受診します。ファミリードクターと呼ばれることもあるGPは、治療をするわけではなく、診察の後に専門医を紹介したり大きな病院を紹介してくれたりします。
妊婦さんの体調や赤ちゃんの状態にもよりますが、定期健診は初期は4週間ごと、中期以降は2週間、臨月からは週に1回ほどの回数になるところが多いようです。
日本では超音波検査や尿検査、体重測定などの検査を毎回のように行いますが、オーストラリアではそこまで詳しく検査をしません。さらに、体重増加についても細かく言われないでしょう。
オーストラリアでは、病院にもよりますが無痛分娩が主流となっており、入院期間も日本と比べるとかなり短いです。長くても3〜4日ほどで退院となります。
動画紹介
なんと、ご自身で出産の様子を撮影されています!病院の様子や出産の瞬間をリアルな目線で確認できるので、非常に参考になります。
【出産レポ】出産密着!オーストラリアで出産!内診グリグリ→陣痛促進→無痛分娩【誕生の瞬間】自分でカメラ回してみた| グロなし、コロナ禍の出産、マスク出産
産まれた瞬間の様子に感動しました。英語と日本語字幕でわかりやすく説明してくれているので、オーストラリアでの出産に役立つはずです。
タイでの出産
タイでは、子供はみんなで大切に育てるという考え方が浸透しています。赤ちゃんの世話も母親だけで負担するのではなく、できる人が引き受ける意識が強いです。ベビーシッターを活用したり、親戚が子供を見てくれたり、一人で抱え込まずに子育てができる体制に安心する母親も多いでしょう。
タイでは帝王切開率が非常に高いです。帝王切開を選ぶ理由として、縁起のいい日・都合のいい日に出産を希望する人が多いことが考えられます。ときには、占い師に出産日を決めてもらい、その日を帝王切開日にすることもあるようです。
さらに、ホテルのようにくつろげる病院や、話題の水中出産ができる病院など、設備が整った病院の選択肢が豊富で、出産費用も比較的安くすむこともタイで出産するメリットといえます。
動画紹介
動画の最初はドキッとするような出産の瞬間の音声が流れます。その後、病室の様子や入院中の感想などをしっかり解説してくれるので、タイで出産する方はぜひ最後までチェックしてください。
【歳の差23歳国際結婚】タイの出産の話~感動!赤ちゃん誕生の瞬間 !คลอดลูกแล้วครับ มาฟังเรื่อตอนนั้นจากแฟนผมกัน(มีคลิปเสียงตอนคลอด)
豪華な病室や健康的な食事に驚きました。映像で確認できるのでわかりやすいです。
まとめ
海外の出産について、イメージを膨らませることはできましたか?
日本と海外では、妊婦健診から出産の瞬間、産後の過ごし方まで色々な違いがあります。
大切な赤ちゃんを安心して産み育てるために、事前にインターネットの情報や動画で知識を入れておきましょう。
この記事の監修者プロフィール
欧米アジア語学センター編集部
ネイティブ講師を中心に、各言語100名を超える経験豊富なプロフェッショナル講師が在籍しています。 当校では、短期間で効率的に語学を習得していただく事を重視して、「わかりやすい日本語で、論理的に教える事ができる」事が講師に求められています。 特に英語以外の言語は、初めて学ぶ方が多く、習得まで与えられる時間が多くない事から必須のスキルだと考えます。また、受講者様のニーズをしっかりキャッチして、それをレッスン内容に反映する能力=コミュニケーション能力を講師に要求しています。 教授メソッドの再現性が求められる画一的・マニュアル的な大手スクールとは違う、オーダーメイドのスクールならではレッスンをご提供しております。