海外赴任中の健康保険はどうする?加入要件や家族の保険についても徹底解説

健康管理

2023.9.9

海外赴任が決まったら、健康保険や厚生年金保険などの社会保険はどうしたらいいのでしょうか?
実は、海外赴任後も健康保険にそのまま加入できるケースと被保険者資格を喪失してしまうケースがあります。今回は社会保険の加入要件についてわかりやすく解説していくので、どちらに該当するのか確認してみてください。
また、日本と海外の社会保険制度に加入し二重に保険料を払わずにすむ社会保障協定や、海外赴任者の家族の健康保険についても解説していきます。

海外赴任者の健康保険について

海外赴任者が健康保険の適用になるかどうかは、日本の国内企業と雇用関係にあるかどうかで判断されます。

【企業との雇用関係と社会保険の適用】

日本企業との

雇用関係

給与支払

社会保険の適用

あり

日本企業から

給与支給あり

適用される

なし

日本企業から

給与支給なし

適用されない

特に、日本企業から引き続き給与が支払われていれば、雇用関係にあると認められるケースが多いです。

健康保険の被保険者資格を継続できるケース

日本企業と雇用関係を継続したまま海外で勤務(在籍出向)する場合、出向元の日本企業から給与が支払われていれば雇用関係は継続しているとみなされ、社会保険が適用されます。そのため、健康保険もそのまま継続できるでしょう。
ただし、海外の病院で日本の健康保険証は利用できないため、海外でかかった療養費はいったん本人が全額立替えし、後日一部療養費として健康保険から支給されます。
また支給される療養費は、実際に支払った金額ではなく、日本の医療機関で治療を受けた場合の保険診療料金を基準として計算されるので注意が必要です。

健康保険の被保険者資格を喪失するケース

海外赴任後に海外の企業へ移籍になるなど、日本の企業と雇用関係がなくなった場合、日本の健康保険の資格は喪失し、日本の健康保険証も使えなくなります。
加えて、日本企業からの在籍出向でも海外の現地企業から給与を支払われる場合は、雇用関係が継続していないとみなされる可能性が高いです。
もし日本の健康保険の被保険者資格を喪失したら、海外で新たに健康保険組合に加入するか、民間の海外旅行保険に加入する必要があるでしょう。
また、1年未満の海外赴任で住民票を除票していなければ国民健康保険に加入することも可能です。

その他の社会保険について

日本国内の企業との雇用関係が継続したまま海外で勤務する場合に、出向元の日本企業から給与が支払われているときは、原則、健康保険を含む社会保険の加入は継続します。
つまり、健康保険や厚生年金保険の保障も継続され、保険料は会社の給与から引き続き天引きされるでしょう。

介護保険

海外赴任により居住地が国外に移った場合、住民票を除票していれば介護保険は適用除外となり介護保険料を支払う必要もありません。
介護保険の適用除外となった際には「介護保険適用除外該当届・非該当届」に添付書類を添え、事業主を通じて日本年金機構に提出しましょう。
ただし、日本の国民健康保険に加入する場合は住民票の除票ができないため、国民健康保険料と併せて介護保険料も納付しなければなりません。

厚生年金

日本国内の厚生年金保険適用事業所での雇用関係が継続したまま海外で勤務する場合、出向元から給与が支払われているときは、基本的に厚生年金保険の加入は継続します。
もし日本の健康保険組合を抜けた場合は、それに伴って厚生年金保険の加入資格を喪失し、厚生年金保険料を支払う必要もなくなるでしょう。
また、海外赴任者で厚生年金保険の加入資格を失った場合、日本の自営業者などが加入する国民年金保険に加入する義務はありませんが任意加入することもできます。
将来の年金額が減少することに不安を覚えるなら、海外赴任の間は国民年金保険への加入も検討してみましょう。

雇用保険

雇用保険は、失業や休業したときでも労働者が安心して暮らせるよう、給付金の支給や就職活動の支援をする制度です。
日本国内の企業と雇用関係が継続したまま海外で勤務する場合、出向元から給与が支払われているときは、基本的に雇用保険の加入は継続します。
ただし、失業給付等は帰国時しか受給できません。
また、日本企業と雇用関係がなくなれば雇用保険の適用はなくなり、保険料の支払いも不要になります。

労災保険

海外赴任者の労災保険は、海外出張か海外派遣かによって対応の仕方が変わるため確認が必要です。
海外出張(労働を提供する場所が海外であるだけで、国内事業所に所属している)の場合、特別な手続きは必要なく、そのまま労災保険の適用は継続されています。
海外派遣(海外の企業に所属し、該当事業所の使用者の指揮に従って勤務する者)は、基本的に労災保険の適用対象外とされるでしょう。
ただし、 企業規模や就労形態などの条件によって海外派遣特別加入制度に加入していれば適応されることもあります。
適用対象外の場合は、労災保険の海外派遣者特別加入制度の内容を確認しておきましょう。

社会保障協定とは

海外で働く場合は、働いている国の社会保障制度に加入をする必要がありますが、日本から海外に派遣された企業駐在員等については、日本の社会保障制度との保険料とを二重に負担しなければならない場合が生じてしまいます。
また、海外の社会保障制度に加入したとしても、年金を受け取るには一定期間その国の年金制度に加入しなければならないケースが多く、就業期間によっては年金を受け取ることができずに不利な状況が生じてしまうこともあります。
社会保障協定とは、加入すべき年金制度を派遣先国の法令のみ適用することを原則とし保険料の二重負担を解消する「二重加入の防止」と、両国間の年金制度の加入期間通算して年金を受給するために必要とされる年金加入期間を満たす「年金加入期間の通算」を可能にする協定です。

社会保障協定を発効済みの国

2022年10月3日時点で、日本と社会保障協定を発効している国は22カ国です。なお、イタリアは署名済みであるものの、発効には至っていません。

【発効済みの国】

ドイツ、イギリス、韓国、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド、ルクセンブルク、フィリピン、スロバキア、中国、フィンランド、スウェーデン

【署名済未発効の国】

イタリア
参考:日本年金機構「社会保障協定」

社会保障協定の内容は、協定を締結する相手国の制度内容等に応じて、それぞれ異なる箇所があります。
二重加入防止の対象となる社会保障制度や年金制度の期間通算の可・不可などは国によって異なるため、海外赴任先の社会保障協定の条件について事前に確認しておきましょう。

海外赴任者の家族の健康保険はどうなる?

海外赴任者に帯同家族がいる場合は、家族の健康保険も継続もしくは喪失の対象になります。
海外赴任する本人が健康保険を継続するなら、家族もそのまま継続となる可能性が高いですが、海外ビザ(家族帯同ビザ)や海外赴任辞令などの書類を提出する必要があるでしょう。

国内居住要件とは

2020年4月から健康保険の被扶養者に国内居住要件が追加されたため、原則、海外に在住している家族は被扶養者になれなくなりました。
ただし、以下の①〜⑤に当てはまる場合は国内居住要件の例外とされており、健康保険を継続できることになります。

【国内居住要件の例外となる例】

① 外国において留学をする学生
② 外国に赴任する被保険者に同行する者
③ 観光、保養又はボランティア活動その他就労以外の目的での一時的な海外渡航者
④ 被保険者の海外赴任期間に当該被保険者との身分関係が生じた者で、②と同等と認められるもの(例:海外赴任中に生まれた被保険者の子、海外赴任中に現地で結婚した配偶者、特別養子など)
⑤ ①〜④までに掲げられるもののほか、渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者
特に、海外赴任をする被保険者に同行する家族は②に該当するので、そのまま健康保険に加入できるでしょう。

家族が被保険者資格を喪失した場合

海外赴任者が日本企業との雇用が認められずに健康保険の被保険者資格を喪失する場合は、基本的に扶養家族も同様に資格を失うことになります。
扶養家族も海外赴任者と一緒に海外に移住した場合、健康保険の被保険者資格を喪失したら、民間の海外旅行保険に加入するか海外で新たに健康保険組合に加入するケースが一般的です。
また、滞在期間が1年未満の海外移住や日本に居住している家族であれば、日本に住民票があるはずなので国民健康保険に加入することができます。

まとめ

海外赴任者がそのまま健康保険に加入できるケースや、被保険者資格を喪失した場合の対策について解説しました。
健康保険以外にも介護保険や年金などの社会保障があり、それぞれ加入要件が異なります。該当するかどうかは、加入している保険組合などに問い合わせておくと安心です。
また、海外赴任者の家族の健康保険について、基本的には海外赴任者が健康保険を継続するならそのまま家族も継続できます。
もし健康保険を喪失する場合は、家族の分も健康保険をどうするのか考えておく必要があるでしょう。
どのような形であれ健康保険に加入しておけば、急なケガや病気に備えられるので安心です。

この記事の監修者プロフィール

欧米アジア語学センター編集部

ネイティブ講師を中心に、各言語100名を超える経験豊富なプロフェッショナル講師が在籍しています。 当校では、短期間で効率的に語学を習得していただく事を重視して、「わかりやすい日本語で、論理的に教える事ができる」事が講師に求められています。 特に英語以外の言語は、初めて学ぶ方が多く、習得まで与えられる時間が多くない事から必須のスキルだと考えます。また、受講者様のニーズをしっかりキャッチして、それをレッスン内容に反映する能力=コミュニケーション能力を講師に要求しています。 教授メソッドの再現性が求められる画一的・マニュアル的な大手スクールとは違う、オーダーメイドのスクールならではレッスンをご提供しております。