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日本の医療水準と海外の医療水準を比較
日本では、国民皆保険制度によって国民全員が治療を受けやすい制度が整っています。自己負担額の安さと医療機関への行きやすさは世界トップレベル。日本が「長寿の国」と言われるのも納得です。
また、日本の医療設備については、病床数・CT台数・MRI台数は世界的にも多く保有しているデータがあります。
医療機関の通いやすさはとして、患者が自由に医療機関や治療法を選べるフリーアクセスが特徴の一つです。世界には、かかりつけ医の登録が必要な国もあります。
世界的にみても日本の病院は衛生的で質の高い医療技術を持っており、看護サービスも充実しているといえるでしょう。しかし、高齢化社会が進むなかで深刻な医師不足が懸念されています。
各国の医療保険制度・医療サービスを比較
海外と日本の保険制度について詳しくみていきましょう。医療費の自己負担割合や医療機関へのアクセス方法など、日本とは異なった仕組みとなっています。
保険制度 |
外来患者自己負担 |
|
日本 |
公的皆保険 |
原則3割負担(自己負担額の上限あり)、3歳以下は2割負担 |
アメリカ |
公的な医療保険は「メディケア」と「メディケイド」のみ |
保有する保険により年間免責金額、定額負担、負担割合等が異なる |
中国 |
公的皆保険(戸籍や就業の有無によって加入できる制度が2種類に分かれる) |
地域ごとに制度の運営方法が異なるため、給付限度額・自己負担割合などが異なる。また、他地域で受診する場合は原則全額自己負担(一部償還も可能)となっている |
イギリス |
9割を占める公的(税財源)、および1割の民間自費医療サービスが両立 |
公的は原則無料(処方箋料等の少額負担あり) |
ドイツ |
皆保険。公的(90%)、および民間医療保険(10%)の両立(公的保険は選択可能) |
原則無料(2013年より自己負担廃止) |
フランス |
公的皆保険(民間保険は二階建て部分をカバー) |
3割負担(償還式)。かかりつけ医を通さずに専門医を受診した場合は7割負担(婦人科・小児科・眼科・歯科は除く) |
スウェーデン |
税方式による公営の保険・医療サービス |
料金はランスティング(広域自治体)が独自に決定。自己負担の上限がある |
タイ |
9割を占める公的医療保険(3種類)、および民間医療保険の両立。 |
保険の種類により異なるが、国民医療保障制度での受診時の本人負担は、2006年10月末から無料化されていたが、2012年9月から復活(低所得者等は引き続き無料)) |
シンガポール |
政府が運営する公的資金による国民皆保険システム「メディセーブ」、「メディシールド」、「メディファンド」 |
自己負担額はサービスや公的補助レベルによって異なる |
(一部参考:厚生労働省「OECD加盟国の医療費の状況」)
日本
日本の医療制度は「国民皆保険制度」を取っており、全国民に低コストで高品質の医療サービスが提供されます。基本的な治療では、医療費の7割は公的医療保険でまかなわれ、患者は3割の自己負担で医療を受けられる仕組みです。加えて、75歳以上の高齢者の自己負担割合は1割となっており、高齢者の割合が高い日本ならではといえるでしょう。
また、患者が医療機関を自由に選び、必要な医療サービスを受けられるフリーアクセスも特徴の一つです。病院の規模や診療科を問わず、自由に受診できます。
さらに、高額療養費制度によって、医療機関や薬局で支払う自己負担金額がある一定の額を超えた場合、超過分が支給されるようになっています。
アメリカ
アメリカでは、世界的に有名な医療機関や専門医が多く存在し、ハイレベルな専門医療を受けることができます。
高齢者や障がい者、低所得者だけが公的医療保険制度に加入でき、そのほかの国民は民間の医療保険に加入するか、自己負担で医療費を支払うケースが一般的です。公的医療保険の「メディケア」は65歳以上の高齢者や身体障害を持つ人などが加入でき、「メディケイド」は低所得者が加入できます。
また、民間の医療保険は基本的に保険料が高額なので加入できない人も少なくありません。一般の初診料だけで150〜300ドルかかるとされており、アメリカでは経済的な理由で医療機関を受診できない人も多く、医療費の負担が大きな社会問題となっています。
中国
中国も日本と同じく「国民皆保険制度」を採用しています。しかし、制度の内容は異なっており、中国の医療制度は戸籍や就業の有無によって加入できる制度が2つに分かれているのが特徴です。
公的医療保険制度でありながら、強制加入と任意加入が並存しています。また、自分が保険料を払っている地域以外で受診する場合は、全額自己負担が原則であること、病院のレベルなどによって自己負担額が異なるでしょう。
特にレベルの高い医療機関は都市に集中しており、医療の地域間格差が問題になっています。
イギリス
イギリスでは税金と国民保険料で医療費がまかなわれる税方式の公的医療制度(NHS)があり、医療を原則無料で提供しています。そのため、貧困層や低所得者の人々にも医療サービスが行きやすい仕組みです。
また、医療機関へはフリーアクセスではなく、症状などに関わらず、まずGPと呼ばれる地域のかかりつけ医療機関を受診することになります。そして、必要に応じて、かかりつけ医から専門病院や大学病院に紹介される仕組みです。
窓口での自己負担がないのは大きなメリットですが、医療機関は常に混雑しており、診療までに時間がかかる点が問題視されています。
ドイツ
ドイツは世界で最も早く公的医療保険制度を導入した国で、もともと低所得層や特定の従業員を対象に発足した制度でしたが、現在では国民の約9割が加入しています。
年間所得が一定額以下の地域住民、学生、年金受給者、失業者等は公的医療保険に加入しなければなりません。そのほかは、任意加入者として加入できます。また、公的医療保険に加入しない人は民間医療保険への加入義務が課されるため、事実上の「国民皆保険」といえるでしょう。
加えて、法的義務は生じませんが、国民の約9割がかかりつけ医を持っており、必要に応じて医師から紹介状を書いてもらうことで専門科での治療に進むケースがほとんどです。
フランス
フランスも日本と同じく「国民皆保険制度」をとっています。患者は自分の希望する病院を自由に選ぶことができ、基本的には自己負担は3割なのですが、かかりつけ医を通さないと自己負担の割合が高くなるため注意が必要です。
また、外来受診の際に、いったん患者が窓口で医療費全額を負担しなければなりません。後日、自己負担分を除いた金額が償還される仕組みです。入院の際は、日本と同様に自己負担分だけを支払う形になります。
スウェーデン
スウェーデンは福祉大国として有名な国です。国民が支払う診療費に上限があり、年間の上限を超えると以降の診療が無料になります。
スウェーデンの医療は地方税を財源とし、日本での都道府県にあたる自治体(ランスティング)単位で提供される仕組みです。 ホームドクター制をとっており、基本的には住民登録をすると自動的に所轄の自治体のホームドクターが決まります。
貧富の差にかかわらず平等に長期的な治療が受けられる点はメリットですが、超過分は税金で補填されるため診療を控える傾向にあるようです。そのため、救急搬送や積極治療(延命治療)などが少ない特徴があります。
タイ
タイの公的医療保険は3種類あり、公務員などが加入できる「公務員医療給付制度」、民間従業員や自営業者などが加入できる「社会保障制度」、農民や自営業者などが加入できる「国民医療保障制度」に分かれています。なかでも、国民人口の約4分の3は「国民医療保障制度」に加入しています。
国民医療保障制度では、原則として事前に登録した医療機関でのみ受診できる仕組みとなっており、日本のようなフリーアクセスではありません。また、1回の外来や入院につき患者負担は30バーツとされており、「30バーツ医療」の通称で知られています。
シンガポール
シンガポールでは国⺠⼀⼈ひとりが⾃らの医療費を積み⽴てる「CPF」を基本とし、医療口座から医療費を引き出す「メディセーブ」の仕組みと、それだけでは賄えない医療費に対する医療保険「メディシールドライフ」に原則加⼊することになります。高額医療の際には、医療費補助金制度の「メディファンド」を活用します。
基本的に自身の積立資金から医療費を捻出しているため、日本と同じく高齢化が進行しているにも関わらず、国単位では医療費負担が少ないのも特徴の一つです。
また、シンガポールでは「医療は産業」という方針を打ち出しており、優れた医療技術を求めて国外からの医療ツーリストも増えています。
海外で医療機関を受診する際の疑問点
日本と海外では医療制度が大きく異なります。もし、日本人が海外旅行や海外赴任中に医療機関にかかることになった場合、事前に知っておいた方がいいことを解説します。
医療費の支払い方法や事前に加入しておきたい保険制度をチェックしましょう。
海外の医療費に国民健康保険・医療費控除は使える?
海外旅行時に支払った医療費が日本の保険制度によって還付される「海外療養費制度」があります。支払われる金額は、日本国内で同様の治療を受けた場合を基準として決められており、帰国後に申請するのが一般的です。そのため、現地では医療費を全額支払う必要があります。
国民健康保険の場合は住民票のある市区町村役場、勤務先の健康保険は健康保険組合に申請しましょう。
さらに、1年間に医療費を一定額以上支払った場合に受けられるのが医療費控除です。海外で支払った医療費もほかの医療費と同様に医療費控除の計算に含めることができます。
海外旅行保険とクレジットカード付帯はどっちがいい?
クレジットカードには海外旅行保険が付帯されているものがあります。クレジットカード付帯の海外旅行保険の注意点は、海外旅行費用などをクレジットカード決済したときのみ補償が適用される付帯条件があったり、補償金額が少なかったりする場合です。
クレジットカードの海外旅行保険を利用したい場合は、自動付帯なのか条件付き付帯なのかを渡航前に確認しておきましょう。
また、手厚い補償を求めたい方はグレードの高いクレジットカードを選ぶか、保険会社が提供している海外旅行保険に加入しましょう。
海外旅行や海外赴任など、長期にわたってさまざまなトラブルに対応できる保険は、保険会社の海外旅行保険を選ぶのがおすすめです。
まとめ
日本の医療サービスは、世界的にみても高い技術や整った設備が魅力です。国民皆保険制度や低い自己負担割合によって、誰もが医療機関を受診しやすいといえるでしょう。
日本と海外では医療環境が異なり、保険制度にもさまざまな違いがあります。日本の当たり前が海外で通用しないことも多いので、海外に行かれる際にはその国の特徴を知っておきましょう。
また、急な受診に備えて保険に加入しておくと安心です。クレジットカード付帯保険や保険会社の海外旅行保険も検討してみてください。
この記事の監修者プロフィール
欧米アジア語学センター編集部
ネイティブ講師を中心に、各言語100名を超える経験豊富なプロフェッショナル講師が在籍しています。 当校では、短期間で効率的に語学を習得していただく事を重視して、「わかりやすい日本語で、論理的に教える事ができる」事が講師に求められています。 特に英語以外の言語は、初めて学ぶ方が多く、習得まで与えられる時間が多くない事から必須のスキルだと考えます。また、受講者様のニーズをしっかりキャッチして、それをレッスン内容に反映する能力=コミュニケーション能力を講師に要求しています。 教授メソッドの再現性が求められる画一的・マニュアル的な大手スクールとは違う、オーダーメイドのスクールならではレッスンをご提供しております。