海外赴任時にすべき住民票の手続きとは?海外転出届など必要な準備について

海外赴任中は住民票を残すのか、海外転出届を出すのか、どっちが正解か悩んでいませんか? 今回は、どのようなケースで海外転出届が必要になるのか、住民票を抜いた場合にどのような影響があるのかを解説します。 また、海外赴任時に住民票を抜く手続き方法も紹介するので参考にしてみてください。必要書類の準備や、住民票以外にも該当する手続きの漏れがないようにチェックしてみましょう。

海外赴任時の「住民票の除票」と「海外転出届」について

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そもそも住民票とは、個々の住民の氏名、生年月日、性別、住所などの事項を記載している帳票です。住民票をまとめたものは住民基本台帳と呼ばれ、居住関係の公証になるとともに、各種行政サービスの事務処理に利用されます。
転居で住所が変わるときには、住民票の記録を更新する必要があり、住民から役所に申し出なければなりません。
一方、海外転出届(住民異動届)とは、日本の居住地から海外に移住したり長期間滞在する際に必要な届出です。
短期間で帰国する可能性が高い場合は、日本国内にある実家や親戚の家に住民票を置いたまま海外赴任をする人もいるでしょう。

住民票を抜いて海外転出届けを出すケース

住民票を抜くのは、1年以上の海外出張や海外旅行などで日本を離れる場合です。
海外赴任の期間が1年以上であれば、生活の本拠が海外に移ったと見なされるため、役所に「転出届」を届け出ましょう。届が受理されると、自動的に住民台帳から名前が消され、住民票は除票となります。
住民票の住所変更は、法律上の義務です。正当な理由がなく住民票を移さないでいると、5万円以下の過料に処されることがあるので注意してください。

海外転出届を出すことによる影響

転出届を提出して住民票が除票されると、社会保険料や住民税などの手続きにも関わってきます。転出届を出すことによる影響を紹介するので、海外赴任前に確認しておきましょう。

住民税

住民税は地方税の一種で、都道府県が課税する都道府県民税と、市区町村が課税する区市町村民税の総称です。
転出届を届け出て、住民票の除票が済んでいるということは、居住地が日本国内ではない人ということになるため住民税の支払いも不要となります。
ただし住民税は、1月1日時点の住所がある市区町村において、前年中の所得に対して1年分の税金が計算されます。 そのため、年度途中に国外転出しても、その年度の住民税は納める必要があるでしょう。
その場合、勤務先を通じて給与天引きで納付される方は問題ありませんが、自分で納付する方は納税管理人を指定して代わりに納付してもらう必要があります。

厚生年金

海外赴任中も日本の会社に所属しており、日本国内で給与が支払われている場合、原則として厚生年金への加入も続けられています。厚生年金保険を支払っていれば、一般的には国民年金にも加入しているでしょう。
しかし、こうした社会保障制度は国ごとに異なります。海外で暮らすときに、その国の社会保障制度に加入することもあるでしょう。
そうなると、国内と国外で保険料が二重にかかってしまうため、現在日本は23ヵ国と協定を結び、二重支払いの防止としてどちらかの国にだけ払えばいいように調整されることもあります。
(引用:社会保障協定|日本年金機構

健康保険

​​日本の会社で健康保険に加入している場合、海外赴任していても被保険者の資格があります。もし海外で病院を受診した場合は、一度医療費を全額自己負担したあと、健康保険組合などに請求手続きを行えば健康保険組合などが負担する分の医療費が戻ってくるでしょう。
一方で、国民健康保険に加入している場合は、住民票の除票とともに国民健康保険の資格も失います。無保険になってしまうと、海外で病気や怪我をしたときに多額の医療費がかかる可能性もあるため、任意で民間の医療保険などに加入しておくと安心です。
駐在する本人は会社の健康保険に加入していることが多いでしょうが、海外赴任で家族も一緒に引越す場合、帯同家族は保険がない状態になってしまうので注意しましょう。

マイナンバー

海外転出届を出した場合、マイナンバーカードも同時に返納します。
ただしマイナンバーが永久に無効になる訳ではなく、海外から日本に戻ってきた際には、海外転出前と同じものが使用できます。

海外赴任が決まったときの住民票に関する手続き

1年以上の海外赴任など、生活の拠点が海外に移るときには、転出届を提出しなければなりません。転出届が受理されると、住んでいた地域から住民票が除票されて、行政事務が適切に運用されるようになります。
住民票を抜いて海外に転出する際の手順と、必要書類について説明するので参考にしてみてください。
ただし、自治体ごとに運用が異なる場合や、今後の変更が考えられます。詳しくは対象となる自治体のホームページや窓口で確かめるようにしましょう。

転出手続きついて

転出手続きのタイミングは、転出(出国)予定日の14日前から当日まで可能です。
転出届(住民異動届)に記載する「届け出年月日」と「異動年月日」ですが、住民票の除票は異動年月日をもって行われます。出国日=異動年月日となるように記載しましょう。
つまり、転出届の届け出年月日が年内でも、異動年月日が年明けであれば1月1日にはすでに出国予定なので、住民税の納税義務はなしとなります。
手続きは、住民票がある市区町村の自治体窓口で行います。提出先の所在地や窓口の名前はインターネットなどで事前に調べておくと安心です。
手続きの対象は、転出する本人と一緒に転出する家族になります。手続きは本人か世帯主、本人の同一世帯の方が行えます。それ以外の人が代理で転出の手続きをする場合は、委任状も提出してください。

転出届に必要な書類

基本的な転出手続きに必要となるものは、転出届(住民異動届)と本人確認書類です。海外転出では、そのほかにも必要となるものがいくつかあります。

【海外転出手続きの際に必要なもの】

  • 住民異動届(役所にあります)
  • 本人確認書類(運転免許証、パスポート、個人番号カード、住民基本台帳カード、在留カード、健康保険証など)
  • 個人番号(マイナンバー)カード(交付を受けている人)
  • 住民基本台帳カード(交付を受けている人)
  • 国民健康保険証(加入している人)
  • 後期高齢者医療証(加入している人)
  • 介護保険被保険者証(加入している人)
  • 印鑑(自治体によっては自著で可)

※郵送での手続きの場合、出国の日付がわかる書類(パスポートのコピーなど)

転出届(住民異動届)

転出届は転出の内容を記載するための書類です。役所等の窓口で受け取ってその場で記載する方法が一般的ですが、郵送での受付が可能な自治体もあります。自治体のサイトに郵送届出用のPDFのデータとして公開されていることもあるので、確認してみましょう。

本人確認書類

本人確認書類には顔写真が付いているものがおすすめです。運転免許証やマイナンバーカードのように、顔写真が付いた書類はそれ一枚で本人確認書類として認められますが、被保険者証や国民年金手帳の場合、複数の書類を組み合わせることで本人確認書類と認められます。

個人番号(マイナンバー)カード、住民基本台帳カード

個人番号(マイナンバー)カードと住民基本台帳カードは、海外転出にともなって廃止されるため役所へ返納することになります。
個人番号(マイナンバー)カードには海外転出によって返納した旨の記載が行われ、失効となったカードは返却されます。海外赴任から帰国した際には、同じ番号を再び使うためカードは保管しておきましょう。

その他証明書

住民であることで加入できている公的サービスや保険については失効となるので、証明書等を返す手続きをしなければなりません。
例えば、国民健康保険に加入している場合、脱退の届け出が求められます。国民健康保険被保険者証・国民健康保険退職被保険者証・後期高齢者医療保険被保険者証・介護保険被保険者証など、これらは海外転出前に返却しましょう。

海外赴任時に必要な住民票以外の手続き

住民票に関する海外転出時の手続き以外にも、関連して手続きが必要なものを紹介します。
該当する方は、こちらも忘れずに確認しておきましょう。

運転免許証の更新

海外赴任が決まったら、必ず運転免許証の有効期限を確認してください。
運転免許証の更新期限を過ぎると免許は失効し、再取得の手続きをするまで運転ができなくなってしまいます。
ただし、更新期間に海外に滞在しており更新手続きができない場合、特例で期限前に更新を受けることができるようになっているため、出国前や一時帰国の際に更新しましょう。

民間保険会社への届け出

民間の保険に加入しているなら、各保険会社の案内に従って海外渡航届を提出しましょう。引き落とし口座を変更したり、国内の代理人を指定したり、住所などの変更をする必要があります。
保証が不要な場合、保険の見直し・解約・中断も検討するのがおすすめです。

証券会社への届け出

海外に移住すると日本の証券口座を運用できなくなり、口座解約、もしくは取引が制限された状態で口座を維持することになります。
証券口座をお持ちの方は、凍結された、取引ができないなどトラブルを防ぐ意味でも、渡航前にしっかり必要な手続きを確認しておきましょう。

納税管理人の準備

日本国内で所得がある場合は、納税管理人を準備しておきましょう。
日本に住んでいなくても、国内で一定額以上の所得があれば、確定申告を行う義務が生じます。海外赴任する場合、出国日までに納税管理人を選定し、所轄する税務署に届け出なければいけません。
なお、確定申告書の作成や申請なども依頼したい場合は、税理士に納税管理人となってもらえば確実でしょう。

銀行口座の手続き

海外赴任により住民票を除票した場合、日本国内の銀行口座を解約しなければならないケースもあります。
解約の必要が無くても、海外と取引できる内容に制限が課せられているケースも多いため、事前に窓口で相談してみましょう。銀行によっては、非居住者でも日本の口座を使い続けられるサービスを提供しているところがあります。

電気・ガス・水道の解約・休止手続き

海外赴任に出発する前に忘れてはいけないのが、公共料金などの手続きです。長期間家を空ける場合、電気・ガス・水道などは止めておいた方が安心できます。
電話やインターネットから手続きができる場合が多いので、1週間〜3日前くらいに業者に連絡を入れておき、出国直前に検針するなどの対応をしましょう。

携帯電話・インターネットの解約・休止手続き

海外赴任する際、使用している携帯電話やインターネットの手続きが必要です。 帰国してから新たに契約し直す予定であれば、利用中の携帯電話を持参し、ショップ窓口で解約の手続きをとります。
もし、電話番号やメールアドレスを維持したい場合は、大手キャリアであれば保管するサービスがあるので問い合わせてみてください。
日本に帰国する頻度が高かったり、その番号にかかってくる可能性が高い場合は、格安スマホで日本の携帯番号を維持する人もいるようです。

まとめ

海外赴任が1年以上となる場合、転出届を届け出る必要があります。住民票を抜いた場合、さまざまな行政手続きに関わってくるので、事前に確認しておきましょう。
また、転出手続きは、出国の14日前から行うことができます。必要書類の準備や、住民票以外の手続きを忘れないように、早めに取り掛かると安心です。

この記事の監修者プロフィール

欧米アジア語学センター編集部

ネイティブ講師を中心に、各言語100名を超える経験豊富なプロフェッショナル講師が在籍しています。 当校では、短期間で効率的に語学を習得していただく事を重視して、「わかりやすい日本語で、論理的に教える事ができる」事が講師に求められています。 特に英語以外の言語は、初めて学ぶ方が多く、習得まで与えられる時間が多くない事から必須のスキルだと考えます。また、受講者様のニーズをしっかりキャッチして、それをレッスン内容に反映する能力=コミュニケーション能力を講師に要求しています。 教授メソッドの再現性が求められる画一的・マニュアル的な大手スクールとは違う、オーダーメイドのスクールならではレッスンをご提供しております。