インドの公用語とは?多様性のある言語の特徴とその魅力

インドではさまざまな言語が使われているのをご存じですか? 公用語として「ヒンディー語」と「英語」の使用を規定としていますが、連邦憲法(第8附則)においては、さらに21の指定言語を定めているのです。 今回は、世界一人口の多いインドで使われている言語についてチェックしてみましょう。どのような文化によって言語が多様化しているのか、それぞれの言語の特徴に焦点を当てて解説していきます。

インドはどんな国?

まずは、インドがどのような国なのか基本情報を確認しておきましょう。

【インドの基本情報】

国名 インド (India)
首都 ニューデリー(New Delhi)
面積 328万7,469平方キロメートル
人口 14億3,651万人(2023年 IMF)
時差 日本との時差は-3時間30分(日本が正午のとき、インドは午前8時30分)
言語 ヒンディー語(連邦公用語)、英語(準公用語)、ウルドゥー語、ベンガル語 等
宗教 ヒンドゥー教徒79.8%、イスラム教徒14.2%、キリスト教徒2.3%、シク教徒1.7%、仏教徒0.7%、ジャイナ教徒0.4%(2011年国勢調査)

インドの面積は日本の約8.8倍あり、2023年には中国の人口を上回り世界1位となっています。
また、インドの北と南では言語系統が異なり、121の言語が確認されている多言語社会です。28州でそれぞれ公用語としている言語があります。

インドの公用語は「ヒンディー語」

インド憲法第343条では、インドの公用語は「ヒンディー語」と定められています。ただし、インドの人口14.3億人に対してヒンディー語の話者数は約5億人といわれており、準公用語である英語の話者数は約1.5億人です。
インドは世界でも稀な多言語文化を持っています。州や地域特有の第一言語に加え、国が定める公用語であるヒンディー語、英語、ベンガル語、ウルドゥー語、タミル語など全22の指定言語が存在しています。

【22の指定言語一覧】

ヒンディー語、ベンガル語、ウルドゥー語、タミル語、テルグ語、サンスクリット語、マラーティー語、アッサム語、ボド語、ドーグリー語、グジャラート語、カンナダ語、カシミール語、コンカニ語、マイティリー語、マラヤーラム語、マニプリ語、ネパール語、オリヤー語、パンジャーブ語、シンド語、サンタル語

インドの言語が多様化している理由とは?

国の公用語はヒンディー語と定められていますが、インドでは州ごとに公用語があり、言語の多様性が認められています。また、部族ごとの異なるインド言語が特徴ともいえるでしょう。

【主な語族】

・インド・アーリア語族
・ドラヴィダ語族
・オーストロアジア語族
・チベット・ビルマ語派

そして、現在のインドでは121もの言語が確認されており、街中の看板や映画の吹き替えなども、複数の言語で訳されています。
ここまで多くの言語があると、インド国内でのコミュニケーションに困りそうですが、実はインド人にはマルチリンガルが多いのです。インドでIT会社に勤めている層には、「英語・州の公用語・ヒンディー語」の最低でも3言語は話せるという方が多くいます。
また、ネイティブとまではいかなくとも、話していることが理解できる言語まで含めると5〜6言語は使えるということもあるようです。違う部族でコミュニケーションをとるときには、ヒンディー語や英語を使うケースもあります。
さらに、宗教の違いにも言語が関わっていると考えられるでしょう。インドの情報サイトの調査では、インド国内のヒンドゥー教徒の6%、イスラム教徒の4%に対し、キリスト教徒では15%以上が英語を話すことができるという結果が出ました。
インドでは社会全体で多様性を認め、違いを受け入れることで多言語化が成り立っているのです。

インドで使われている主要な言語

インドで話者数の多い公用語について、その言語の特徴と使用されている地域を解説していきます。

ヒンディー語

インドの中部や北部で話されている言語で、憲法では連邦公用語と定められています。話者数が5億人とインド国内でも圧倒的に多く使われる言語です。世界では中国語、英語に続いて3番目に多く話されています。
デリー首都圏のほか、ハリヤーナー州、ジャールカンド州、マディヤ・プラデーシュ州、チャッティースガル州、ウッタル・プラデーシュ州、ウッタラーカンド州、ヒマーチャル・プラデーシュ州、ラージャスターン州、ビハール州の公用語であり広く分布している言語です。

英語

インドの公用語の一つです。主に法律文書や政府の公式文書、教育機関、ビジネスの場において英語が使用されています。
過去のイギリスによる植民地支配下で、行政、司法、教育の分野で英語が使用されたことで急速に広まりました。
現代では、インド国内で異なる地域・部族の人々がコミュニケーションを取る際の共通語としても使われています。

ウルドゥー語

ウルドゥー語はインド・ヨーロッパ語族のインド語派に属する言語です。また、隣国パキスタンの国語であり、インドのイスラム教徒の間でも話されています。
言語学的には、ヒンディー語とウルドゥー語は同じ言語の2つの標準といわれていますが、大きく違う点としてヒンディー語がインド系の文字デーヴァナーガリーで表記されるのに対して、ウルドゥー語はアラビア文字系のウルドゥー文字で表記されるというところです。ウルドゥー語は、多くの語彙がアラビア語やペルシア語に由来しています。

ベンガル語

ベンガル語はインドの東部(西ベンガル州、トリプラ州)で公用語として話されており、バングラデシュの国語でもあります。現在、インド国歌はヒンディー語で歌われていますが、元々はベンガル語で作られていました。
ベンガル語で使⽤されるベンガル⽂字は、ヒンディー語を表すデーヴァナーガリー⽂字などと同系ですが、個々の⽂字の形はベンガル語特有のものです。

マラーティー語

マラーティー語は、インド・ヨーロッパ語族のインド・アーリア語派に属し、インド西部のマハーラーシュトラ州の公用語です。
また、隣接するゴア州、グジャラート州、アーンドラ・プラデーシュ州などにもこの言語を使用する人が多数居住し、全体で約9,000万人の言語使用者がいると算定されています。

テルグ語

テルグ語はドラビダ語族に属する言語であり、インド南東部のアーンドラ、プラデーシュ州、テランガナ州で主に話される公用語です。また、スリランカ北部などでも話されています。
ちなみに、日本でも公開され話題となったインド映画「バーフバリ」や「RRR」はテルグ語の映画です。
文字はブラーフミー文字より発展した、テルグ文字を使用します。

タミル語

タミル語は南インドのタミル・ナードゥ州で話されるほか、スリランカ北部および東部、マレーシア、シンガポール、マダガスカル等でも使われており、世界で18番目に多い約7400万人の話者人口となっています。
また、タミル語には日本語との共通点もあり、母音が似ていたり、文法や文章構成の基本的な語順が同じという特徴があります。

まとめ

インドには数多くの言語が存在しますが、ヒンディー語と英語が主な公用語となっています。よく耳にするヒンディー語には、「ナマステ=こんにちは」や「アッチャー=いいね」がありますよね。
しかし地域によって使用される言語に差があり、すべてのインド国民がヒンディー語や英語を話せるわけではないので、インドを訪れる際には2つの言語を習得しておくとコミュニケーションに困りません。
欧米・アジア語学センターでは、インドの公用語である英語もヒンディー語も学習できます。マンツーマンレッスンやオンラインレッスンなど、ライフスタイルに合わせてコースを選択し習得を目指しましょう!

この記事の監修者プロフィール

欧米アジア語学センター編集部

ネイティブ講師を中心に、各言語100名を超える経験豊富なプロフェッショナル講師が在籍しています。 当校では、短期間で効率的に語学を習得していただく事を重視して、「わかりやすい日本語で、論理的に教える事ができる」事が講師に求められています。 特に英語以外の言語は、初めて学ぶ方が多く、習得まで与えられる時間が多くない事から必須のスキルだと考えます。また、受講者様のニーズをしっかりキャッチして、それをレッスン内容に反映する能力=コミュニケーション能力を講師に要求しています。 教授メソッドの再現性が求められる画一的・マニュアル的な大手スクールとは違う、オーダーメイドのスクールならではレッスンをご提供しております。